統合失調症日記(木村きこり作画、ぶんか社コミックス)は、統合失調症になった作者の妄想・幻痛・幻聴を描いたコミックエッセイ

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統合失調症日記(木村きこり作画、ぶんか社コミックス)は、統合失調症になった作者の妄想・幻痛・幻聴を描いたコミックエッセイ

統合失調症日記(木村きこり作画、ぶんか社コミックス)は、統合失調症になった作者の妄想・幻痛・幻聴を描いたコミックエッセイです。周囲の人との付き合いにも苦労があったこと、往来で「危ない人」になったことなどをリアルに描いています。

統合失調症は、100人に1人弱が発症するといわれています。

にもかかわらず、うつ病やパニック障害などに比べると、もっとも馴染みが少ないかもしれません。

統合失調症は、簡単に述べると、心や考えがまとまりづらくなってしまう病気です。

なぜ、まとまりづらくなるかというと、脳内で妄想や幻覚が起こったり、喜怒哀楽が乏しくなったり、意欲が低下したりと、思考・判断や行動を邪魔するはたらきが生じるからです。

その統合失調症を、高校時代に発症したのが、本書『統合失調症日記』の作者である木村きこりさんです。

その体験を、ぶんか社コミックスで上梓したのです。

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3人の人格を持った囁き声が……

主人公のきこりさんは、高校3年生で統合失調症を発症しました。

その背景には、親のプレッシャーがあったかもしれません。

美大受験を考えていたのに、父は「六大学を受けろ。美大は芸大しか認めん」と。

大変だけど絵が学べるなら、と考えたきこりさんですが、ある時、学校の板書が滲んだように見えました。

視力検査も問題なし。

それどころか、文字が絵に見えるようになります。

戸惑いながら勉強を進めるも、成績は下降します。

寄せ書きを書くと、何を書いていいのかまとまらず、そもそも文字になっていないものを書いて迷惑をかけてしまいます。

そうかと思うと、今度は魔法陣を描けという神様からのお告げが脳内に……。

さらに、手を組んで踊れとのお告げで踊りだします。

どうやら、それは神のお告げではなかったようですが、以後も頭の中で誰かがささやく生活に悩まされるようになります。

幻聴の主は、野太い男の声、小さな子供の声、甲高い女性の声と3人も!

そのストレスは、暴力となってあらわれます。

きこりさんは、自宅のストーブをけって火事を心配させたり、母親の首を絞めてあやうく大事に至りそうになったり。

病院では、統合失調症と診断されます。

幻聴は、いずれも人格を持った声だそうです。

つまり、「悪魔の囁き」のように、中身のある話をされるのです。

食べ物を前にして、「早く飯に顔突っ込んで死ねよ」なんてささやきも。

耳の後ろから言われるような感覚のため、つい「うるさいよ」なんて応えてしまうことも。

一方、出かけるときに「カギ忘れてるよ」という親切な声もあるらしいのですが。

町中で、一人で喧嘩している人がいたら、それは統合失調症だそうです。

きこりさん自身も経験済み。

「何気取ってんだ、ブス」という囁きがあったかと思うと、木の葉がさわさわっと揺れながら、「ここにいるぞ、かかってこい」なんて声が聴こえてくるのだそうです。

きこりさんは、薬を飲んで対応します。

薬を飲んで幻聴が消えるわけではないのですが、「幻聴が幻の声だ」と自覚することはできるようになるそうです。

いずれにしても、そんなの抱えたら大変ですよね。

そんなきこりさんの日々の生活を、漫画は描いています。

長く放っておくと回復が困難に

漫画では一通り出てきていますが、統合失調症は具体的にどんな症状があるのか。

以下に枚挙します。

  • 妄想
  • 幻覚
  • 喜怒哀楽が乏しくなる
  • 意欲の低下
  • 仕事の能率の低下
  • 行動障害
  • 会話が支離滅裂になる
  • 自分の世界に閉じこもってしまう

そして、統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。

陽性症状の典型は、幻視・幻覚・幻聴などや妄想です。

陽性症状は急性期に生じやすく、統合失調症特有の所見でもあるため、正確な診断の根拠として重要な症状の1つです。

幻覚・幻視・幻聴・妄想・幻触などは、客観的には存在しない症状という共通点があります。

統合失調症になると被害妄想をすることが多く、誰かに尾行・盗聴されていると思い込むケースも少なくありません。

しかし、誰かが囁いたように聞こえても、誰かに尾行・盗聴されたりしても、その「誰か」はいない、何かを触ったように感じても、その「何か」は客観的に存在しない、ということです。

思考が混乱して、考えに一貫性がなくなってしまう傾向もあります。

ひとりごとをいったり、急に騒ぎ始めたりするなど、行動障害を起こすことも少なくありません。

考えに一貫性がなくなくなることで会話が支離滅裂になり、周囲の人には何をいっているのか理解できなくなることもありますし、自分の世界に閉じこもってしまって家から出なくなるケースもあります。

一方、意欲や気力・興味がなくなったり、自分の中に閉じこもったり(自閉)というのは、「本来はあったものがなくなってしまった」症状だという共通点があります。

たとえば、喜怒哀楽が乏しくなって周囲に興味を示さなくなったり、意欲が低下してしまい、何もしたくなくなったりします。

さらに、「陰性」のひとつとして、認知機能障害の特徴もあります。

物事を覚えるのに時間がかかるようになったり、目の前の仕事や勉強に集中したり、考えをまとめたりすることができなくなったり、物事に優先順位をつけてやるべきことを判断したり、計画を立てたりすることができなくなったりします。

以上のようなことから、統合失調症になってしまうと仕事の能率が低下する傾向が強いのですが、急性期には薬物療法が効き、症状が改善すると再び能率が戻るといわれています。

しかし、長く放っておくと、回復が困難になります。

統合失調症の原因

統合失調症発症の要因は、はっきりとわかっていません。

ただ、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが、くずれることが関係しているのではないかといわれています。

具体的には、次のことが考えられます。

  • 遺伝
  • 脳の異常
  • 性格
  • ストレス

統合失調症は、遺伝の関与が強く示唆されているといいます。

たとえば、統合失調症の一卵性双生児の発症一致率が50%とか、患者の親から生まれた子供の発症率は10倍といった報告もあるからです。

ただ、だからといって遺伝が決定だというわけではなく、該当しない場合も多々あるので、因子のひとつといったところです。

また、統合失調症の人の脳は、正常な人とは異なり、前頭葉、側頭葉、海馬、扁桃体といった部位が萎縮していると言われています。

そして、過度のストレスです。

先日、『「子どもを殺してください」という親たち』(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)という、精神障害者移送サービス業を描いています

「子どもを殺してください」という親たち(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています
「子どもを殺してください」という親たち(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています。統合失調症などの子弟を、説得で病院に移送するサービスを日本で初めて創始。移送後の自立・就労支援にも携わっています。

毒親にプレッシャーをかけられた子弟は、その多くが統合失調症になっています。

ただ、今のところは、いずれも統合失調症を引き起こす要因の一つに過ぎないと思った方が良いかもしれません。

それだけに、引き続き調べることが必要であるとともに、社会的に理解と支援も求められるわけです。

あなたやあなたの友達が、実は統合失調症かもしれません。

相互理解と支援のために、統合失調症について知っておいたほうがよいと思いますから、それにはぜひ本書をご覧ください。

本書『統合失調症日記』(木村きこり作画、ぶんか社コミックス)は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

以上、統合失調症日記(木村きこり作画、ぶんか社コミックス)は、統合失調症になった作者の妄想・幻痛・幻聴を描いたコミックエッセイ、でした。

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