『自宅で不労所得を生み出すすごい仕掛けー働かないで年収10倍!』(石田健、インフォトップ出版)は情報ビジネスの書籍です。「2008年初版一刷」で新刊本ではありませんが、石田健さんは今も情報ビジネスの第一人者として業界に君臨しています。
ネットビジネスの祖の書籍
石田健さんの、『自宅で不労所得を生み出すすごい仕掛けー働かないで年収10倍!』(インフォトップ出版)という大仰なタイトルの書籍があります。
奥付には「2008年初版一刷」と記されています。
つまり新刊本ではありません。
ただ、昨今のネットビジネスの祖といえる人物の書籍なので、1度読んでみたいと思っていました。
情報商材、アフィリエイト等、ネットを使ったビジネスが行われています。
質について様々な評価がある世界ですね。
いずれにしても、その元祖であり、かつ育ての親ともいっていいのが石田健さんでしょう。
ネットビジネスはうさんくさい、連中はサギだという紋切り型の決めつけではなく、いいものはいい、おかしいことはおかしい、という是是非非で判断した私の読後感をこれから書いてみます。
アフィリエイト塾のプロデューサー
現在、インフォプレナー(情報商材販売者)や有力なアフィリエイターのほとんどは、この石田健さんが開いた日本で初めてのネットビジネス塾「石田塾」の塾生です。
『自宅で不労所得を生み出すすごい仕掛けー働かないで年収10倍!』は、1章で石田健さんの理念。2章でインターネットビジネスの概論、3章がSEO、4章がアフィリエイト、5章が情報ビジネス、6章がメルマガ、7、8章は仕事に対する発想の転換を説いています。
石田健さんは早稲田大学卒業後、1年ぶらぶらした後に留学(社長の息子なので金持ち)。
そこで修士号取得の勉強だけでなく、インターネットを使ったビジネスがあることを知ります。
彼はそれを日本で実践して大儲け。
それだけでなく塾を開いて、同様の事業者をネットの世界に送り出しました。
大橋巨泉さんが司会したテレビ番組『世界まるごとHOWマッチ』などもそうですが、日本のコンテンツはアメリカから採り入れられたものが少なくありません。
向こうの情報をいちはやく知り、最初に導入した人が国内市場で「先行者利益」を得られるというのは、「海外通」のジャーナリストなども同じです。
SEOやアフィリエイトについては、さらりとしか書かれていませんが、この点については賛否両論あります。
彼が、メルマガなどでほとんど同じ内容のアフィリサイトの量産という手法を説いていますが、それらについては当時からスパムだという批判は少なくありません。←それと、現在はGoogleの検索クォリティが上がり、その手法は使えません。
誤解のないように書くと、コピペやミラーサイト自体は違法ではないのです(著作権侵害は除く)。
ただ、検索エンジンのユーザービリティを損ねるという点が問題なんですね。
あとは、書籍や商材を買って彼のように稼げない人が、「詐欺だ」「うさんくさい」と言い出す問題。
「石田健 詐欺」で検索するとたくさん出てくるのですが(笑)、対外的な名誉を貶めるのは、事実であるなしにかかわらず名誉棄損になるんですよ。
説明された通りのサービスが客観的に提供されなければ、それは民法上の問題にしたり、公正取引委員会や生活相談センターなどにかけこんだりすればいいと思いますが、稼げるかどうかはあくまで自己責任なんですね。
そこをごっちゃにして、商材買いました→稼げませんでした→すぐに「詐欺だ」と被害者ヅラするのは、違うだろうと思います。
稼ぐ仕組みを作れるかどうか
で、本書のもうひとつの問題点は、タイトルに煽りが入っています。
この手の書籍は、こういうタイトルのつけ方が多いのですが、私はいかがなものかと思います。
「働かないで年収10倍!」というのは正確ではありません。
たとえば、石田健さんは午前4時には起きて仕事を始めているそうなので、「働かないで」どころか、人一倍働いています。
そんなにうまい話は、ないんですよ。
では、書籍のタイトルが唐突に出てきたホラ話なのかというと、そうともいえないところがややこしい。
つまり、稼ぐ仕組みさえ作ったら、あとは「働かないで」稼げますよという意味です。
「稼ぐ仕組み」というのは、カール・マルクスの『資本論』の言葉を借りれば「生産手段」です。
マルクスの『資本論』では、機械や施設をさします。
ネットビジネスは情報産業なので、メルマガやブログなどのツールがそれにあたります。
その「生産手段」によって、労働なしに剰余利益を得ましょう、という話です。
簡単にまとめますと、一般の労働者は、労働力を給料を対価にその都度資本家に切り売りしている。そうではなくて、あなた自身の富を再生産するための労働にしましょうという、「労働の質的転換」を石田健さんは呼び掛けています。
石田健氏は早稲田大学商学部時代、いわゆる「マルケイ」、マルクス経済学を学び、同書にもその影響が反映された経済学や哲学的文章が出てきます。
ネットビジネス志向者が気づいているかどうかわかりませんが、古典を読んだことのある人なら、彼が先人の著作に影響を受けていることがよくわかるはずです。
ネットビジスとマルクス経済学
実は、ネット起業者には、マルクス(経済学)主義者が意外と多いのです。
あのホリエモンも、マルクス主義者だった故・青木雄二のファンでしたね。
マルクスというと、「共産党宣言」を連想されるかもしれません。
が、それは階級闘争による社会発展を主張した哲学的見解であり、経済学として、この社会が搾取するものとされる者によって成り立っている、という見定め自体は、何も労働者の側に立った共産主義者でなくてもできます。
彼らは、マルクスの社会分析と経済学から資本家とは何かを学んだんでしょうね。
どんな世界でも結果を出す人は、基本の哲学があるということなんでしょう。
ネットビジネス、見方は様々だと思います。
私も、そんなに詳しいわけではありませんが、中にはみるからに「これはちょっと……」と感じるものもあります。
実際にトラブルになったものもいくつもあります。
ただ、石田健さんらが「詐欺」ではなく本当に稼いでいることも事実です。
そして、それは「運」ばかりではなく、マルクス経済学という理論的根拠をもって判断した結果の「成功」だとしたら……
ネットビジネスの、少なくとも各商材の評価は措くとしても、古典を読む、ということの意義は感じました。
詐欺呼ばわりして全否定して完結するか、そこからなにがしかのビジネスの本質を見出して積極的なことは採り入れるか。社会で能力を開花できるかどうかの明暗は、その発想の違いが分水嶺になっているのかもしれません。
以上、『自宅で不労所得を生み出すすごい仕掛けー働かないで年収10倍!』(石田健、インフォトップ出版)は情報ビジネスの書籍です、でした。
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