西遊記(バラエティ・アートワークス著、Teamバンミカス)は、中国で明の時代に完成した四大奇書と呼ばれる伝奇小説を漫画化しました。唐僧・三蔵法師が白馬・玉龍に乗って、孫悟空、猪八戒、沙悟浄と幾多の苦難を乗り越え天竺へ取経を目指します。
『西遊記』は、中国で16世紀の明の時代に大成した伝奇小説です。
『三国志演義』『水滸伝(すいこでん)』『金瓶梅(きんぺいばい)』とともに、中国の「四大奇書」の一つと数えられています。
バラエティ・アートワークスが漫画化し、Teamバンミカスから上梓されています。
まんがで読破シリーズ全55巻の第43巻です。
この記事では、Kindle版をもとにご紹介いたします。
『西遊記』でなくても『孫悟空』という名前で、ストーリーは多くの方がご存知かもしれません。
「唐の時代に中国からインドへ渡り仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵の長年の旅を記した地誌『大唐西域記』を基に、道教、仏教の天界に仙界、神や龍や妖怪や仙人など、虚実が入り乱れる一大白話小説」(Wikiより)です。
つまり、三蔵法師自体は実在したけれども、孫悟空、沙悟浄、猪八戒らのお供や、旅の途中で戦う妖仙はフィクションである、ということです。
たとえば、我が国でも写経でおなじみの『般若心経』は、紀元前後1世紀の、大乗仏教の書物である「般若経」のエッセンスを、7世紀に玄奘三蔵がまとめて漢訳化したものだというのは、『気にしない技術 ~まんがで読み解く般若心経入門~』(あさ出版)でご紹介しました。
『池上彰と考える、仏教って何ですか?』(池上彰著、飛鳥新社)でも、玄奘三蔵が、インドの経典を中国語に訳したとき、たとえば『般若心経』ではあえて訳さなかった箇所があったことを指摘しています。
なぜ、「あえて訳さなかった」かというと、中国の儒教とつじつまを合わせるためでした。
要するに、我が国の仏教諸宗派のもととなっている大乗仏教の歴史において、玄奘三蔵は重要な役割を果たしているのです。
中国の「四大奇書」の『水滸伝』については、その日本における有名な翻案作品である滝沢馬琴作『南総里見八犬伝』をご紹介したことがあります。
本書は2022年12月24日現在、AmazonKindleunlimitedの読み放題リストに含まれています。
西遊記のあらすじ
西遊記のあらすじです。
花果山(かかざん)という山の頂上にある大きな卵型の石から、金の目をした猿が生まれました。
すなわち石猿。孫悟空です。
斉天大聖(せいてんたいせい)孫悟空と名乗るも、悪さばかりするので、仏陀は悟空を五行山という山に押し込め、「500年たったら助けてくれる人が現れる」と言い残して、そのまま放置してしまいました。
ま、ここでフィクションてわかりますよね。
孫悟空が岩から解き放たれても、お釈迦様は生きていることになっていますが、実際のお釈迦様はもちろん500年も生きていませんから。
それに、仏陀は自己の悟りは開いても、預言者ではありませんし。
それはともかくとして、天竺(インド)の霊山雷音寺では、釈迦如来が言います。
世界の4つの大陸(四代部州)のうち、唐の長安がある南瞻部州は自堕落で争いが絶えない。
そこで、私の持つ『三蔵の真経』を与えて、人々に善を勧めたい。
ついては、長安にでかけ、わが真経を取りに来る人物を探してほしい。
そこで手を上げたのが観世音菩薩です。
観世音菩薩は、五行山に閉じ込められていた斉天大聖孫悟空を、お経を取りに来る者の弟子になることを条件に岩から出してやり、金箍呪(きんこじゅ)という輪っかを頭にはめます。
本書によれば、すでに沙悟浄と猪八戒も話がついていました。
そして、長安では玄奘三蔵法師が受諾します。
ということで、三蔵法師たちの旅が始まるわけです。
が、観世音菩薩は長安まで来ているわけですから、そういうことなら、初めからお経を持って長安まで来て、それを三蔵法師に渡せば済む話だったのではないでしょうか。
いや、苦労して災難を経験しながら天竺まで来ることに意義があるのです。
それでまあ、途中、いろいろな妖怪と戦って、なんとか仏陀のおわす霊山までやってきます。
観世音菩薩の見通しでは、2~3年で着くはずでしたが、妖怪がことのほか強敵揃いで、14年もかかってしまいました。
迎えの金頂仙人に、一晩休まれて身なりを整えてから、経を取りに行けと勧められます。
そして、一行が山を取り巻いている川を渡ろうとしたとき、川には三蔵ら一行の死骸が流れていました。
本書によると、三蔵は川に落ちて絶命したことになっています。
仏教的には、肉体を脱ぎ捨て仏の身となって、仏陀のもとに昇っていくわけです。
要するに、500年経って、仏陀も生身の人間ではなく仏様になっていたわけです。
それで、帰りは筋斗雲に乗って、あっという間に長安に帰ります。行きは14年もかかったのに(笑)
でも、仏様になったので、長安では姿は見えません。
『西遊記』は、子供の頃から読み聞かされていたつもりでしたが、実は最後はみんな仏様になっていたというのは、初めて知りました。
しかも、仏教的には、それはめでたいことなんですね。
うーん、これからいろいろなことを勉強して、社会に旅立つ子供向けのエンディングではないような気がしますね。
日本や西洋の「めでたしめでたし」童話とは、「めでたし」の意味が違います。
さて、みなさんは、お子さんにこのエンディング、どう読み聞かせますか。
1978年のテレビドラマ版が有名
『西遊記』というと、堺正章さんが孫悟空を演じた『西遊記』(1978年10月1日~1979年4月1日、国際放映/日本テレビ)が、今も思い出されます。
斉天大聖孫悟空を堺正章さん、三蔵法師を夏目雅子さん、猪八戒を西田敏行さん、沙悟浄を岸部シローさん、釈迦如来が高峰三枝子さん、観音菩薩を勝呂誉さんらが演じた半年もののテレビドラマです。
エンディングテーマには、ゴダイゴの『ガンダーラ』が使われました。
もう44年も前のドラマなのに、思い出されるのは、それだけ完成度が高かったからだと思います。
1978年版ドラマ『西遊記』は、日本テレビ開局25周年記念番組として、1978年10月1日~1979年4月1日にかけて、毎週日曜8時に放送されました。
制作会社は国際放映。
同社は、日本テレビ開局20周年記念番組として、『水滸伝』を作った実績で選ばれたのだろうと思います。
孫悟空は天界で暴れ回り、釈迦(高峰三枝子)に石牢に閉じ込められますが、天竺に仏教の経典をもらいに行く三蔵法師に、旅のお供をする条件で助けてもらいます。
天界でおつとめをしていた猪八戒と沙悟浄も、それぞれしくじりをやらかし、旅の供に合流するというのがドラマの第1回でした。
猪八戒と沙悟浄は、今で言えば天界の官僚だったわけです。
孫悟空がすぐに人を殺めたり、沙悟浄が人喰い鬼であったりとして描かれていた原作とは、少し設定を変えたわけですね。
ま、ゴールデンタイムのドラマだったので、あまり生々しいのもあれですし、勧善懲悪にしたほうがわかりやすいですしね。
ま、伝奇小説ですから、そのへん翻案されても、著作権の翻案権侵害ダァ、なんてクレームもないのでしょうし。
続編として、『西遊記II』も制作され、猪八戒を左とん平さん、三蔵の愛馬となった竜の化身である玉竜役を藤村俊二さんが出演しました。
ま、結局、どちらも天竺には着けていないんですけどね。
それは、ドラマが好評だったので続編を作るためということもあるし、やっぱり現世の命を終えて仏様になるエンディングをめでたく描くというのは、ちょっと難しかったのかもしれませんね。
まあ、結局『西遊記III』は制作されなかったんですけとね。
DVD化されているので、未見の方はぜひご覧になることをおすすめします。
以上、西遊記(バラエティ・アートワークス著、Teamバンミカス)は、中国で明の時代に完成した四大奇書と呼ばれる伝奇小説を漫画化、でした。
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