『2時間ドラマ40年の軌跡増補版』(大野茂著、東京ニュース通信社)は、1977年にスタートして1980年代全盛だった2時間ドラマ検証の書籍です。各局で多いときは週8本作られた2時間ドラマの、詳細なデータと製作に関わった人々の証言などを確認できます。
『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日)という長尺の単発ドラマがスタートしたのは1977年。
以後、『火曜サスペンス劇場』『木曜ゴールデンドラマ』『水曜グランドロマン』(日本テレビ)『月曜ドラマスペシャル』『ザ・サスペンス』(TBS)『月曜ドラマランド』(フジテレビ)など、過去の1時間連続ドラマの枠を2つつぶした「2時間ドラマ」が、1980年代に次々登場しました。
本書は、その2時間ドラマの歴史を振り返り検証する、マニアには大変資料的価値のある書籍です。
なお、「増補版」とついているのは、初出版に、出演者データやスタッフデータ(主演、助演、監督、音楽、脚本、テレビ局別ヒストリー)など、データ部分を大増強した改訂版なのです。
土曜ワイド劇場(テレビ朝日)
『土曜ワイド劇場』は2時間ドラマの元祖として、ご紹介したい人気シリーズはたくさんあるのですが、いくつかに絞ってご紹介します。
西村京太郎トラベルミステリー
91歳で他界したトラベルミステリーの巨匠・西村京太郎が“鉄道と小説を愛した50年”「『雷鳥九号』のトリックを試したら…」
『西村京太郎の推理世界』より #4#文春オンラインhttps://t.co/BHKxlovn1A— 文春オンライン (@bunshun_online) May 24, 2022
『西村京太郎トラベルミステリー』は、三橋達也⇒高橋英樹、愛川欽也⇒高田純次と役者を交代して続いている人気シリーズです。
鉄道好き、旅好きな人にはこたえられないシリーズです。
江戸川乱歩の美女シリーズ(全33作)
発売中の雑誌「昭和39年の俺たち」で、江戸川乱歩の美女シリーズの特集記事にイラストを描かせていただきました。
雑誌はモノクロですが、原画はカラーで描きました。
許可を得たのでご紹介いたします。#昭和39年の俺たち #美女シリーズ pic.twitter.com/WbQYE5DrBh— はしもとまい (@CuP3RTracfUKQVC) May 31, 2022
『江戸川乱歩の美女シリーズ』は、『非常のライセンス』とともに天知茂さんの代表作です。
お色気シーンというと、このドラマを思い出します。
荒井注さんの渋い役どころが印象深いです。
家政婦は見た!(全26作)
昭和を振り返る画像。
『市原悦子(家政婦は見た!)』
プロフィールは→https://t.co/SWNgMQXypr#昭和#歴史#芸能人 pic.twitter.com/JdxOQZoHal— 昭和平成ガイド (@showa_g) May 24, 2022
『家政婦は見た!』は、もともと『松本清張の熱い空気 家政婦は見た!夫婦の秘密「焦げた」』(1983年)につながるシリーズです。
『家政婦は見た!』になり、主人公の市原悦子の役名が、「河野信子」から「石崎秋子」にかわり、所属する家政婦紹介が、「協栄家政婦紹介所」から「大沢家政婦紹介所」に。家政婦の日当は6700円になりました。
でも家政婦の顔ぶれは同じです。
第1作目が好評で、2作目を作るということになったものの、松本清張が続編の制作を許可しなかったとのことで、2作目以降は、1作目をモデルにしたオリジナルな設定にしたわけです。
木曜ゴールデンドラマ(読売テレビ/日本テレビ)
木曜ゴールデンドラマ、秀作揃いなので、もっと再放送してほしい。 pic.twitter.com/bWOEGGa0HE
— 濱田研吾 (@hamabin1) February 13, 2021
私がもっとも好きな枠は、この『木曜ゴールデンドラマ』でした。
サスペンスではなく、ヒューマンドキュメンタリーが多かったですね。
テレビ映画としての体裁を構成して、ドラマ後に近藤三津枝さんの解説が入りました。
いつのまにか衆議院議員になられたのでびっくり。
個人的には、スポンサーがライオン油脂なのもまた良かった。
なぜなら、私のテレビ初出演は1975年8月14日、ライオン油脂の生コマ『私の作ったコマーシャル』だったからです。
ま、それは余談なんですが、この枠は再放送待望論をツイッターでしばしば見かけます。
80年代、「木曜ゴールデンドラマ」で個人的に注目していた演出家としては「鶴橋康夫」「森崎東」が挙がるのは当然として、私的には「天野恒幸」演出作品も注目していた。あまり世評的に注目が当たらないのは残念。「木曜ゴールデンドラマ」の再放送の機会が増えれば再評価されると期待している。
— 古崎康成 (@furusaki_y) July 26, 2020
日本テレビではなく、読売テレビが幹事の制作でしたが、BS日テレで再放送をお願いしたいものです。
火曜サスペンス劇場(日本テレビ)
『火曜サスペンス劇場』は、2時間ドラマの中でももっともポピュラリティを確立したシリーズかも知れません。
日本テレビ系では、『木曜ゴールデンドラマ』の方が先行して始まりました。
いわゆる『火サス』、日本テレビの『火曜サスペンス劇場』は、3番目に登場しました。
こちらも、土曜ワイド劇場のようなミステリー&サスペンスの路線でしたが、謎解きよりも、事件の背景にある人間模様に力点を描いた構成になりました。
オープニングは、木森敏之の曲によるダイジェスト、そしてエンディングは岩崎宏美の『聖母たちのララバイ』などを毎回流して、ひとつひとつの話は一話完結でも、それらを束ねて一つの番組であるという統一感をもたせました。
監察医・室生亜季子(全37本)
『空白の実験室 疑惑の女外科医』
火サス86.5.27
出演:浜木綿子、橋爪功ほか渡辺淳一原作、ある医局の教授と助教授の不審な死を巡る医療サスペンス。主人公の女医を演ずるは浜木綿子。そう、香川照之の母ちゃんである。この作品の半年後、彼女の当たり役「女監察医・室生亜季子」シリーズが始まる。 pic.twitter.com/Zy0MDrIaLd
— 2時間ドラマ40年の軌跡 (@2dora40) March 30, 2022
『監察医・室生亜季子』は、浜木綿子さんと左とん平さんのコンビでお馴染みです。
左とん平さんが鬼籍に入ってしまったので、もう当時の放送を見ることしかできません。
シリーズ最多作品となった人気作品は『監察医・室生亜季子』。
浜木綿子演じる監察医による緻密な物証の積み重ねや、左とん平演じる警部との掛け合いが高い人気作品となりました。
しかし、決して恋愛関係にはなりませんでした。
小京都ミステリー(全30本)
小京都ミステリーの「お手柄お手柄!」が聞けるとは、、、!
懐かしい pic.twitter.com/xT01O2Js30— レンズ (@x0_hr) August 24, 2018
『小京都ミステリー』は、船越英一郎さんと片平なぎささんの代表作と言ってもいいものです。
本書は、2時間ドラマをこう定義しています。
- 人が原因の事故・事件が扱われている
- 謎を解く、または真相を追うドラマである(犯人サイドから描く場合は、犯行の動機や経緯を描いている)
- 不安・気がかりな心理描写がある
- 近現代が主な舞台である
この全てが当てはまる、2時間ドラマの教科書的な作品と言えるのではないでしょうか。
『小京都ミステリー』は、ルポライターの片平なぎさが、事件に遭遇する話です。
大映テレビらしく、ツッコミどころがある設定です。
女検事・霞夕子(新も入れて全35本)
女検事・霞夕子を録画したのを観ている。度々再放送してくれるのでありがたい。桃井かおり氏の霞夕子しか観ない。事務官の桜井君にお茶を入れさせる所。坊さんの旦那に弱音を吐いて泣く所。息子のリョウタが勉強しないので説教する所。お婆さんに手を洗ってから食べなさいと言われる所。全部好き。 pic.twitter.com/rWzO6Cv6Rn
— ふじ (@robin_love8210) October 17, 2020
『女検事・霞夕子』は、桃井かおりさん主演です。
『新・女検事 霞夕子』は鷲尾いさ子さん、床嶋佳子さんが演じています。
夏樹静子さん原作のドラマで、私も再放送を見た記憶があります。
『月曜ドラマランド』(フジテレビ)
No.599:♪#クライマックス御一緒に/#あんみつ姫
1984年発売の #小泉今日子 さんの8枚目のシングル。
「あんみつ姫」という名義でリリースされたシングルで、本人主演のフジテレビ系月曜ドラマランド『#あんみつ姫』の主題歌でありました\(^o^)/pic.twitter.com/bAvsNqAq3O— 70?90年代邦楽 ご紹介bot (@70_90_hougaku) May 27, 2022
『月曜ドラマランド』は、どちらかというと若い人向けでしたね。
おニャン子クラブのメンバーがずいぶん出ていました。
漫画を原作とした作品が多かったように記憶していますが、『オレたちひょうきん族』がウケた時代なので、この枠もパロディと言うか、たとえば『ひみつのアッコちゃん』と『もーれつア太郎』を組み合わせた翻案のドラマなんて放送していました。
多いときは各局で週8本制作
『2時間ドラマ40年の軌跡増補版』は、大野茂さんが東京ニュース通信社から上梓したものです。
土曜ワイド劇場、木曜ゴールデンドラマ、火曜サスペンス劇場など、1980年代に始まった2時間ドラマは、各局で多いときは週8本作られました。
それまでは、ドラマと言えば1時間、もしくは30分で2クール、視聴率が良ければその先も延長。
当時は特番などもなかったので、レギュラーのドラマが年末年始も放送されていました。
しかし、昭和も50年代になると、「お茶の間」が死語になりつつあり、毎週決まった曜日、決まった時間にレギュラーのドラマを家族で見るという習慣が少しずつ崩れ、長尺の1話完結ドラマが新鮮にうつったのかもしれません。
テーマとしては、『木曜ゴールデンドラマ』のような愛と感動路線もありますが、多くはサスペンスやミステリーを題材としたもので、それをそれまでの1時間ではなく90~120分の枠で描いたわけです。
ドラマの作り方も、いろいろ工夫はあったようです。
たとえば、裏番組がスタートする時報をまたぐ頃のシーンには、他局に移られないようにお色気シーンを入れるとか、CMを入れる前は謎を残すとか、映画館と違い「ながら」で視聴するテレビの特性に合わせて、セリフは説明を多めにするとか……。
そんな2時間ドラマも、なんだかんだで40年続きました。
家政婦、湯けむり、トラベルミステリー、美女、明智小五郎…etc。
シリーズ化されたものもいろいろありました。
本書は、「2時間ドラマは、B級娯楽である」として、かつてのヒット作品や制作の苦労などを振り返っています。
以上、『2時間ドラマ40年の軌跡増補版』(大野茂著、東京ニュース通信社)は、1977年にスタートして1980年代全盛だった2時間ドラマ検証、でした。
コメント