MMT(現代貨幣理論)って何?(カリンゴン著、Kindle版)は、MMTを啓蒙するYouTuberカリンゴンさんが動画を文字に起こしています。自国建て通貨は破綻しない、政府の負債は国民の資産など、既存の知識を覆す解説を分かりやすく行っています。
『MMT(現代貨幣理論)って何?』(カリンゴン著、Kindle版)は、MMTを啓蒙するYouTuberカリンゴンさんが動画を文字に起こしています。
私も楽しみにしています。カリンゴンさん。
本書は2022年8月3日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
自国建て通貨は破綻しない、政府の負債は国民の資産
本書『MMT(現代貨幣理論)って何?』は、『MMTのことがざっくりわかるYouTube動画の書き起こし』というサブタイトルがついているように、内容はすでに動画コンテンツとして公開済みです。
ということで、詳しくは該当の動画をごらんください。
お金はモノではなくて貸し借りの情報である
著者は、第1章では「お金はモノではなくて貸し借りの情報である」と強調します。
今の日本にある全体のお金は約1000兆円。
ところが、現ナマは100兆円ほどしかありません。
差額の900兆円はどうしたのか。
それは、銀行が現ナマがなくても数字を入力しただけのお金です。
金を借りたい人に対し、銀行は、実際にもっている現金よりも多い預金残高を作り出すことができるのです。
実際の貨幣がなくても、通帳に数字を打ち込むことができる。
それを信用創造といいます。
「お金」の条件
続いて第2章では、「お金」の条件を4つ定義しています。
- 債務と債権の記録
- 価値を換算するための円やドルなどを単位とする
- 譲渡性があること
- 担保(根拠)があること
他のところで使えるかどうかということ
日本円の貨幣はもちろん、小切手も該当します。
銀行はお金を0から作り出すことができる
第3章では、「銀行はお金を0から作り出すことができる」。
第1章で触れた、信用創造について具体的に解説しています。
山田さんが銀行からお金を借りるとき、銀行はそのお金がなくても、山田さんの通帳にその金額を書き込む。
「え、別の客の預金をまた貸しするんじゃないの?」
そんなことして、山田さんに貸した後、その「別の客」が「やっぱり預金はおろす」ということになったらどうするんですか。
だから、そんなことはしないで、信用創造でお金を作り出すのです。
だから、お金はモノではなくて、「貸し借りの情報」だと著者は言います。
そして、そのお金は物の購入に当てられる。
返済されることで、信用創造されたお金も消える。
つまりですよ。
市中のお金(マネーストックといいます)は、誰かがお金を借りることで増える (借りることでしか増えない)ということです。
個人だけではなく、企業もそう。
そして、もっとも大きな債務は、政府が借りる「国債」ですね。
「国債」は、借金で孫子の代に引き継ぐな、なんていいますけど、「国債」がなかったら、つまり政府がお金を借りてくれなかったら、市中にお金はまわらないんです。
税金が財源?
財務省の公式サイトを見てください。
財務省の公式サイトには、2021年度予算の一般会計歳入、つまり国家予算の財源106.6兆円の内訳は、
所得税17.5%(18.7兆円)
法人税8.4%(9.0兆円)
消費税19.0%(20.3兆円)
その他税収8.9%(9.5兆円)
その他収入5.2%(5.6兆円)
公債金40.9%(43.6兆円)
と記載されています。
つまり、半分近くは税収以外が財源になっており、もっとも割合が大きいのは「公債金」つまり国債なんです。
銀行がお金を作り出す仕組み
第4章は、「銀行がお金を作り出す仕組み」。
第1章では、銀行は信用創造で手持ち以上に扱いを増やせることが本書には書かれていますが、それは、預金準備制度という決まりに基づきます。
金融機関の預金残高のうち、中央銀行(日本銀行)への預け入れを義務付けられている比率です。
だいたい2~0.05%の間といわれています。
本書では、1%で試算しています。
銀行は、かりに預金総額の1%を日本銀行へ預け入れるとして、100万円の現金をもとに、計算上は1億100万円まで扱いを増やせることになります。
この預金準備率を大きくしたり小さくしたり調整することで、市中に出回るお金を調整することができるわけです。
日銀の金融緩和とは国債を買い取ってお金を発行することだ!
第5章は、「日銀の金融緩和とは国債を買い取ってお金を発行することだ!」。
もっとも昨今の日本銀行は、預金準備制度ではなく、市中銀行が日本銀行に預けている日銀当座預金の額自体を返ることで調整しているといいます。
具体的には、市中銀行がもっている国債を、日本銀行が買い取って市中銀行の日銀当座預金に買い取り国債相当の金額を入金します。もちろん信用創造で。
そうすると、そのお金でまた市中銀行は、個人や企業にお金を貸せるわけです。
つまり、日本銀行がたくさん買い取るほど、市中銀行はたくさん貸せるお金ができるわけです。
現在、日本銀行が買い取った国債残高は500兆円強。
アベノミクスでは、6年間で400兆円買い取ったと本書には書かれています。
そして、日本銀行がお金の流れをよくするためにとれる手段を3つまとめています。
- 預金準備率を下げること
- 国債などを買い取ってもとになるお金を増やすこと
- 金利を下げること
3つ目は初めて出てきましたが、金利が下がればお金は借りやすくなります。
しかし、「2」の買い取りは、年間50~60兆行ったにも関わらず、政府と日本銀行が目標としているインフレ率2%には達しませんでした。
それは、いくらお金を借りやすくしても、それだけでは経済はよくならないということです。
では、あとはどうすればいいのか。
政府が国債を発行する「財政出動」をして、市中に需要を起こすことです。
たとえば公共事業を発注する、ということです。
そうなってこそ、初めて雇用も創出されるし、事業者もお金を借りて事業を拡大する、という方向にいくわけです。
大リーグボール2号のようなものですね。
青い虫は青い葉に止まる。
青い虫が黄色い葉に止まっても、保護色にならないわけです。
2つの条件が揃わなければ駄目なのです。
ですから、金融緩和だけでなく財政出動も大切なのです。
国債発行のプロセスとその役割
第6章は、「国債発行のプロセスとその役割」。
国債というのは、政府による債務ですね。
政府がその債務で、公共事業などを発注します。
政府が国債を発行した後の、国債の動きを追っています。
その具体的なプロセスは本書の図解をご覧いただくとして、結論を引用します。
「債務ってことは借金だろう。そんなもので公共事業をやったら借金が増えるじゃないか」
と、思われますか。
でも、第1章で述べられているように、お金は「債務」から生まれるのです。
政府がそれをしなかったら、もしくはその債務を返してしまったら、お金が生まれないので実体経済は動かなくなりますね。
本書は、「政府がそれを返さないで、実際に誰が困るのか考えてほしい」としています。
別に、あなたやあなたの会社は、何も迷惑しないですよね。
ついに出てきたMMT(現代貨幣理論)
第7章は、「ついに出てきたMMT(現代貨幣理論)」。
MMT=Modern Monetary Theoryについての解説です。
- 自国通貨を持つ政府は財政的な予算制約に直面することはない
- すべての経済及び政府は、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある
- 財政の赤字はその他の経済主体の黒字だ
自分の国で作って自分の国で回しているお金は、いくら「借金」してもそれで破産はしない
ただし、供給力が許す限りという限界。急激なインフレにならないという範囲でという意味
「国の借金」によって、市中にお金がまわり、それは個人や企業の預金となる
著者は、この章で、MMTを否定することを「天動説」と呼んでいます。
つまり、いずれ「地動説」(MMT)が定説となる日が来る、という意味です。
MMTに対する財務省の苦しすぎる反論
第8章は、「MMTに対する財務省の苦しすぎる反論」。
これまでいわれている、MMTを否定する財務省の言い分を反証しています。
第9章、第10章、第11章、第12章も同様に有識者たちや政治家の言い分を反証しています。
国債発行の仕組みとコロナ増税は必要か?
本書第6章の、「国債発行のプロセスとその役割」ですが、やはりYouTubeで、『現代貨幣理論(MMT)って何?【素人の素人による素人のための経済入門】』という針原崇志さんの動画がわかりやすく説明されています。
第7回は、国債発行の仕組みを説明しています。
第7回 国債発行のしくみ【素人の素人による素人のための経済入門】 https://t.co/WJBi7u6Od1 @YouTubeより
— 石川良直 (@I_yoshinao) May 28, 2021
第10回は、コロナ対策で財政出動したお金を税金で回収する、なんて困ったことを言う人がいますが、そんな必要はないことを説明しています。
第10回 コロナ増税をしたらどうなるの?【素人の素人による素人のための経済入門】 https://t.co/aquw9MM7j8 @YouTubeより
— 石川良直 (@I_yoshinao) July 31, 2022
カリンゴンさんの動画とともに、こちらもご覧になることをおすすめします。
以上、MMT(現代貨幣理論)って何?(カリンゴン著、Kindle版)は、MMTを啓蒙するYouTuberカリンゴンさんが動画を文字に起こした、でした。
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