「しょうがいしゃ」を文字で表現する時、「障害者」なのか、「障がい者」なのか、「障碍者」なのか、迷うことはありませんか

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「しょうがいしゃ」を文字で表現する時、「障害者」なのか、「障がい者」なのか、「障碍者」なのか、迷うことはありませんか

「しょうがいしゃ」を文字で表現する時、「障害者」なのか、「障がい者」なのか、「障碍者」なのか、迷うことはありませんか。2年前の2019年2月6日には、宝塚市が「障碍」という表記を決めましたが、後続の自治体を聞きません。改めてこの問題を考えます。

意外と広まっていない「障碍者」

2年前の2019年2月6日は、宝塚市が「しょうがい」の表記を「障碍」と決めた日です。

自治体で表記を定めたのは、全国で初めてのことだそうです。

オリンピック・パラリンピックを念頭に置いて急いで決めた背景があるので、てっきり他の自治体もそれに続くのかと思いきや、そうでもないようですね。


ひとつには、使い慣れていない字ということもあるかもしれません。

「碍」という字は、もともと常用漢字ではありません。

2010年の常用漢字表改定でも追加されませんでした。

それが、東京五輪・パラリンピックを意識して、衆議院文部科学委員会と参議院文教科学委員会が2018年になって急に、「碍」の常用漢字表への追加を検討するよう決議したのです。

決定した文化審議会国語分科会は、結論を先送り。

しかし、「地方公共団体や民間の組織が常用漢字表にない『碍』を用いて表記することを妨げるものではない」という見解を示しました。

要するに、自分たちの立場を守りながら、衆議院文部科学委員会と参議院文教科学委員会の「国策」を黙認して、今回の宝塚市の決定につながったということです。

しかし、まあ本質は字そのものではありません。


このOGPが、私の結論でもあるのですが、表記がかわったところで問題はそこじゃないだろ、ということです。

ただ、当事者には考えのある人もいるので、どう表記すればいいのかを悩んでしまうのも確かですよね。

NHKは「障害者」と表記

この件では、NHKは一貫して「障害」という表記を使っています。

https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/pdf/20200401_3.pdf

NHK放送文化研究所放送用語委員会の報告によると、「障害表記に関する調査結果」で、「見たことがあり,抵抗感はない」表記として、「障害」が80%、「障がい」が63%、「障碍」が9%となっています。(実施期間:2019年10月4日~ 10月14日、抽出方法:層化副次(三段)無作為抽出法、調査方法:調査員による個別面接聴取法、調査対象:全国の満20歳以上の男女4,000人、回収数(率):1,204人(30.1%))

そして、こう結論づけています。

    「障害」の放送での表記について,以下のことを確認する。

  • 原則は「障害」とする。
  • 必要に応じて「障がい」を使うこともできる。
  • 固有名については「障がい」「障碍」を使うこともできる。
  • 上記の事項は,今後も実情に応じて不断の見直しを行う。

NHKの放送では、常用漢字表の漢字を基本として表記しているので、「障害者」という表記をとっています。

障碍のある人々はこう考える

では、実際に障碍のある人はどう考えているのでしょうか。

一ノ瀬メイさんの場合は


リオパラリンピック水泳日本代表一ノ瀬メイさんは、「障がい者」と、ひらがなに開くことが「嫌い」と明言している一人です。


障害の『害』が、ひらがななのが嫌い。
害やからよくないやろ、でひらがなにする。
私からしたら腕がないのが障害なんじゃなくて、それを持って生きていく社会が害。
私からしたら障害は本人じゃなく社会やから、ひらがなに直して勝手に消さんといてほしい。

自分の意見をはっきり述べたことで、快哉を叫ぶ人はたくさんいました。

ただ、障碍のある人がすべて同じ考えかというと、そうではありません。

当時、Facebookの障碍者関連のグループでは、異論もありました。

でもそれは当然で、障碍があるという「共通点」だけで、それぞれ別人格で、立場も考えも様々ですから、いろいろ意見はあります。

たとえば、自分には障碍があるけれど、ない人からすると、自分たちに対して理解と支援が必要なのは事実だから、その分だけそれは「害」であるという考えもありました。

乙武洋匡さんの場合は

「五体不満足」の乙武洋匡さんが、ご自身のYoutubeチャンネル『乙武洋匡の情熱教室』で、この問題に言及された動画を配信しています。


結論を先に書きますと、乙武洋匡さんも、先のアンケート同様、いずれにしても本質的な問題ではないとしています。

概要を抜粋します。

10年ぐらい前から、一部の障害当事者や支援団体が、「害」の字は社会の害になっている印象を抱かせるので使うべきではない、というクレームの声を上げたので、ひらがなになっていった。

しかし、そんな事を言うのだったら、障害の「障」という字だって差し障るという意味があるので、となると「しょうがいしゃ」とすべてひらかなければいけなくなり、そのうちハンディキャッパーとかチャレンジドなんて、横文字に逃げていくしかなくなってしまう。←※「ひらく」とは「漢字で表記できるものをひらがなにする」という編集用語

障害当事者のうち、どれぐらいの人達がこの障害という漢字で書いた時の言葉を嫌がっているのかっていうのを調査したことがあるが、30.5%程度だった。

ところが逆に、ひらがなが嫌だという人は43.1%もいた。

自分が嫌なのは、メディアが、なんかうるさい人たちがいるから、ひらいとけば無難なんでしょってなってしまういうこと。

流されるんじゃなくて、しっかり信念を持って使い分けてほしい。

たとえば、千葉市長の熊谷俊人さんは、かなり以前から「私は障害と漢字で表記します」というポリシーを発表。

障害という言葉は、決して障害のある皆さんが社会にとっての害になっているということでもなく、社会に障害があってそれに直面している人たちという意味なんだと。

だから言葉を軟らかくして、なんとなく解決したように見せることには賛成ではなく、社会には障害が存在するんだ。だからそれをきちんとみんなで解消していかなければならないんだという気持ちを込めて、私はこれからも「障害」と漢字で表記しますといった話をしていて、大賛成である。←※NHKも同じ理由で「障害者」と表記しています。

一方、自分(乙武)のあるフォロワーからは、「障害」という漢字の表記にすごく悲しむ人を知ってるから私は使えませんというリプライを頂いたが、目の前の相手によって、使い方を分けることが正解だと思っている。

たとえば、「背が高い」は本来はどちらかといえば褒め言葉として使われる事が多く、少なくとも差別用語ではない。

しかし、小さい頃から背が高いことをからかわれ冷やかされてきた人に対しては、「いやあ、背が高いですね」とは普通は言わない。

その時の相手の事情と文脈によって使い分けているのは、障害のあるなしにかかわらず普段からやっていることだが、なぜか障害者に対しては一律漢字で書くのはやめましょうのような話になってしまう。

言葉の表面だけを取り替えても、障害者に対する世間の意識や、障害があることによる社会的に背負わされる不利益を取り除いていかない限り、いつまでもこの言葉狩りのイタチごっこが続いていくだけである。

といった内容でした。

ご関心のある方は、OGPをクリックして動画を閲覧なさって下さい。

ひらがなだけは使いません

私の場合は、本質から外れた煩わしい展開にならないよう、「障害者」「障がい者」「障碍者」と、3通りの表記を何の規則性もなく等しく使い、「高次脳機能障害」「発達障害」など、すでに言葉として出来上がっているものは、そのまま「障害」と書いてきました。

が、最近になって、「ひらがな」は脱落して、「障害」か「障碍」に絞って使うことにしていました。

理由は、勘違いしている意見を知ったからです。

曰く、「障害者」と書くのは差別で、自分は差別や偏見のない人間だから「障がい者」と表記するとのご批判があったのですが、私はむしろ逆だろうと思いました。

「障がい」という表記は要するに、「害」を使いたくない、でも別の字を使う気はない、ということです。

なにか考えがあるわけではなく、たんに「害」と表記することを避けているだけでしょう。

避けることでむしろ、他人を「害する」などの否定的なイメージをより強く想起させるものになっているという意見だってあるのです。

「障害者」表記は差別で「障がい者」なら差別ではない、などという定説などありません。

そもそも障害者の「障害」というのは、社会がその人を「害」としているという意味ではなく、その人にとって現代社会は困難な妨げがあるという意味でしょう。

結局、誰かに聞かれたら、答えられる自分なりの考えがあれば何でも良い。

あとは表記ではなく、中身の問題ではないでしょうか。

以上、「しょうがいしゃ」を文字で表現する時、「障害者」なのか、「障がい者」なのか、「障碍者」なのか、迷うことはありませんか、でした。

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