岸田文雄総理は、26日の政府答弁で「MMTは採用しない」と述べたことが話題なっています。しかし、その答弁自体正しいのか。MMTは現代貨幣理「理論」であり、「政策」や「イデオロギー」は、それをいかなる価値に使うかという話で全く別ものだからです。
現代金融理論(MMT)に基づく政策は国の信頼を失う?
岸田文雄総理の答弁を報じたニュースのOGPです。
日銀引き受け前提の財政政策は国の信頼失う、MMT採用せず=岸田首相 https://t.co/QFHo34BkJR MMTは政策ではなく通貨流通理論。この人も食えない人だね。
— 石川良直 (@I_yoshinao) January 30, 2022
内容は、26日午後の衆院予算委員会で、緒方林太郎委員(有志)への答弁としてこう述べた。
安倍晋三政権と同様に、日銀が2%の物価目標をもとに金融政策を行う方針を政権で確認している。
また、日銀の国債引き受けを前提とした、現代金融理論(MMT)に基づく政策は国の信頼を失うとして採用していない。
安倍元総理については、MMTを「フグ料理」にたとえたことが話題になっています。
【浜田宏一・元内閣参与】MMTは「フグ料理のよう」と安倍前首相…「料理人」次第で美味にも猛毒にも https://t.co/yWKbaxWSqX
— 石川良直 (@I_yoshinao) January 30, 2022
これでは、安倍総理に期待した、MMTを喧伝する保守的立場の人々、いわゆる京都学派の立場がないですね(笑)
私は、そもそも安倍元総理に期待していなかったので、改めて「食うことしか考えつかない苦労知らずだな」ぐらいにしか思いませんが。
いえ、問題は、たとえが「食うこと」だからではなく、MMTの認識を根本的に間違っていることにあります。
MMTというのは、現代貨幣「理論」です。
つまり、それ自体は政治的意図を持ちません。
ただ、積極財政が財政破綻しないという説について、「政策」の根拠として語られることはあるというだけのことです。
日銀自体、自国建て通貨だから財政破綻しないことを認めています。
それを説いているのがMMTですから、日銀と政策協定した政府がMMTを採用しないというロジックはつじつまが合わないのですが、要するに積極財政はしない、と言いたいのを、MMTをあたかも特定のイデオロギーのように描いて論点を逸らせているのでしょう。
で、その違いを、食うことしかノウのない安倍前総理は区別がつけられなかったと。
そして、岸田総理も同じ穴の狢だということです。
「MMT」と「(積極)財政」というのは、いわば「科学」と「技術」のような関係であり、本来は別物です。
つまり、財政問題というのは、MMTで明らかにされた「お金の増える仕組み」を、いかなる価値観で使うかという議論であり、MMTそのものの議論ではありません。
そこは間違えるべきではありません。
政府が予算を執行するのが「通貨発行」それを説いたのがMMT
岸田総理の発言については、さっそく積極財政派の西田昌司参議院議員が、1月28日のビデオレター(YouTubeチャンネル)で言及しています。
岸田政権が、安倍政権時代の、物価安定2%目標をインフレターゲットとするという日銀との政策協定を引き継ぐというものですが、MMTを採用しないという答弁も、安倍政権からの引き継ぎであるから、別段驚くことではない。
ただ、いずれにしてもMMTについての認識を間違えている、という内容です。
タイトルは、ズバリそのもの。
岸田政権ではMMTを採用しない?
MMTは信用創造の事実を述べているだけだ!
と、タイトルで内容がすぐに分かるものです。
安倍総理がもともと、日銀との政策協定で、物価安定2%目標をインフレターゲットとすると、協力してやって行くと決めたわけですけども。それをそのまま、岸田政権も引き継ぐと。
そして、安倍政権の時代も、私は予算委員会で質問しました。
「日銀がこれだけどんどん、金融拡大のために国債を買っているわけですけれども、事実上、それによって財政はいくらでも出すことが出来る。実際に安倍政権はMMTを採用していることになるんじゃないか」と質問しましたが、安倍総理もその時は、岸田総理と同じように「そういうつもりはない。MMTを採用するつもりはない」という答弁だったので、同じことなんですが(ですから特に改めてどうという話でもないのですが)、MMTを否定されているわけですけれども、MMTは別にそんなこと言ってるわけじゃないんですね。
MMT(現代貨幣理論)のいちばん大事なところは、通貨供給というのは一体何か、ということなんですよ。
通貨供給というのは要するに、どういう形でお金が増えるのか。預金、現金。この2つを通過ということにしますと、この増える仕組みをMMTはこう説明しているわけなんですね。
ひとつは、民間銀行がお金を貸し出すこと。誰かが借り入れを申し込んで、銀行がそのお金を融資すると。そのことによって、市中に出回る預金量が増えるということ。これが信用創造と言いますが、英語ではmoney creation。まさに、通貨創造そものもなんですね。
そして、もうひとつのルートがあって、政府が国債を発行して予算執行すると。そのことによって、民間の預金量はやはり増えると。
政府がお金を発行して予算執行すること。実はこのことが通貨発行なんですよ。
通貨発行権は政府が持っていると言いますけれども、まさにその通貨が預金量を増やすことになる。
これ当たり前の話ですよね。そのアタリマエのことをMMTは言っているだけで、とりたててなにか特別な理屈を持ってきているわけじゃなくて、実際に金融の現場で行われていることで、金融の現場の人なら、このことはみんな知ってるわけなんですよ。(中略)
ところがそのことを、経済学者、マスコミ、政治家などが、案外知らないんですね。
繰り返しますが、MMTに賛成反対という議論を行うなら、解き明かしている仕組み、すなわちスペンディングファーストの「真偽」であり、積極財政の是非、ましてやその細かい使い方の議論というのは、「MMTの議論」とは別物です。
ここを一緒くたにするのは、無知であるか、それとも何らかの政治的意図があるか、そのどちらかであると思います。
以上、岸田文雄総理は、26日の政府答弁で「MMTは採用しない」と述べたことが話題なっています。しかし、その答弁自体正しいのか、でした。
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