志位和夫日本共産党委員長が、MMT(現代貨幣理論)について「急激なインフレになる可能性がある」として賛成しない旨を表明しました。そして、軍事費削れとの持論を展開しましたが、それがコロナ禍の給付金に間に合うのかどうかは発言しませんでした。
「年に10%とか20%もの急激な『インフレ』が心配」
もとの記事は、日本共産党公式サイト。
『社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(3)』というタイトルです。
社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(3)/「税金の集め方、使い方」の大改革を https://t.co/iJv9ayy24B
— 石川良直 (@I_yoshinao) June 4, 2021
それによると、志位和夫委員長はこう述べています。
志位 私たちは、「借金を増やしても心配はいらない」という立場には、くみしません。たしかに、日本の場合は、借金のほとんどは外国ではなく、国内で借りたものですし、いざとなれば日本銀行がお金を発行して国債を買ってしまうこともできます。しかし、「財政破たん」というのは、「借りたお金が返せない」ということにかぎらず、別の形で起こることもあるんです。いざとなれば日銀がお金を発行できるといっても、好き勝手にいくらでもできるわけではありません。お金というのは、物やサービスを売り買いするための手段ですから、物やサービスの流通量に見合ったお金の量が必要になります。物やサービスとの関係で、お金ばかりがどんどん膨らんでいったらどうなりますか。お金の価値が下がってしまいますね。お金の値打ちが下がるということは、「インフレ」になるということです。
多少の「インフレ」ならともかく、年に10%とか20%もの急激な「インフレ」になったらどうなるか。そうなると、働く人の実質賃金がどんと下がってしまう。あるいは、なけなしの貯金もぼーんと目減りしてしまう。国民にとっての大被害が起こります。戦後の一時期、ものすごい「インフレ」が起こって、そういう大被害が起こったことがありましたが、そういう問題があるのです。
「インフレになったら、その時は政府の財政支出を減らしたり、増税したりして、借金が増えるのを減らせばいい」という議論がありますが、これは理屈ではそうだったにしても、実際にはできません。「インフレ」で物価が上がって、ただでさえ暮らしが苦しくなっているときに、「消費税を増税する」とか、「社会保障を削る」ということをしたら、暮らしの破壊に追い打ちをかけることになってしまいます。
ですから、私たちは、「借金を増やしても心配ない」という立場にくみするわけにはいかないということを、言いたいと思います。
大企業、富裕層にきちんと税金を払ってもらって、あるいは、5・4兆円にもなった軍事費にメスをいれて、財源をつくっていくという道を進みたいと思います。財政について考えの違う人とも、そういう点は一致すると思うんですよ。そういう一致点で協力するということもやっていきたいと思います。
うーん、残念ですね。
ここで、私は日本共産党とは決定的に違いが出てしまいました。
同党公式サイトの「占い」のページは、拙著『暦・占い・おまじない』(かもがわ出版)をもとに記事を作成し、参考文献として書名と私の名前の記載もしてくれました。
もう休刊しましたが、写真雑誌の『グラフこんにちは日本共産党です』とか、『女性のひろば』や、しんぶん赤旗日曜版、『学生新聞』などにもインタビュー記事を掲載していただいたことがあります。
だからまあ、あまり批判的なことを述べるのもアレなんですが、この意見どうなのかなと思います。
急激な「インフレ」はどういう根拠によるリスクなのでしょうか
だって、現在はびくともしないデフレですよね。
いや、現在どころか、もう30年デフレが続いているわけです。
「年に10%とか20%もの急激な「インフレ」になったらどうなるか」といいますが、あまりにも現状とかけ離れています。
どうなると、そんな急激なインフレが起こるのか、仮説で結構なので、きちんと説明していただきたいですね。
たとえば、れいわ新選組の山本太郎さんは、「年200兆円規模の通貨発行であれば、インフレ率2%にも達せず、毎年の財政出動可能であることはハッキリしている。」と述べています。
もうおなじみですが、山本太郎さんは、「みんなに毎月10万円を配り続けたら国は破綻するか」というテーマの動画を発表しています。
【みんなに毎月10万円を配り続けたら国は破綻するか?】#特別定額給付金 #新型コロナウイルス #現金給付【れいわ新選組代表 山本太郎】 https://t.co/c638dRiBgX @YouTubeより
— 石川良直 (@I_yoshinao) May 8, 2021
10万円を給付する場合 1年間で月10万円×1.2億人×12か月=144兆円。
結果は、物価上昇率は1.215倍に過ぎないそうです。
そこで、4年連続(48ヶ月、2023年度まで)毎月10万円給付したら、2年目は1.436倍、3年目は1.809倍、4年目は1.751倍と、逆に4年目では下がってしまうそうです。
さらに、山本太郎さんは、毎月20万円でも試算を披露。
20万円を給付する場合 1年間で月20万円×1.2億人×12か月=288兆円。
その場合でも、1.495倍しか上がらなかったそうです。
2年目は2.255、3年目は2.951、4年目は2.741で、2年目~4年目は2%をオーバーしてしまいます。
山本太郎さんは、「1年目は20万円を配り、2年目からは10万円とかっていうコンビネーションでもひょっとしたらいいかもしれませんね」と述べています。
これは、過日の記事でご紹介しました。
志位和夫さんがいう、「インフレ」が10%というのは、山本太郎さんの試算とは桁が一つ違っています。
つまり、現状を考えると現実的ではない想定なのです。
さすれば、どういう試算によるものか、知りたいですね。
それがなかったら、他のアンチMMT、たとえば藤巻健史さんあたりの「ハイパーインフレ」論と同じレベルの妄言のたぐいになってしまいますよ。
公党の公式見解が、そんないい加減なものでいいのですか。
お金のまわり方の調整で根本的な解決になるのか
そもそも、お得意の「軍事費減らせ」自体、「野党共闘」に有頂天になって、あまり強調しなくなりましたよね。
志位さんは東大の理系出身なのに、数字が苦手なのでしょうか。
5.4兆の軍事費にメスを入れろといいますが、かりにこの全額を浮かせたとしても、昨年のような特別定額給付金には遥かに足りません。
何しろ12兆円かかっているんですからね。
いいですか、たった1回分の給付金にすら、はるかに届かないんですよ。
それに、5.4兆の44.2%は、自衛隊員の人件・糧食費です。
日本共産党が大好きな言い方、「人殺しの道具」の費用を全額浮かせたとして、自衛隊員も路頭に迷わせるんですか。
日本共産党の落選中だった前市会議員の子弟である川上慶子さんを御巣鷹山で救ったのは、自衛隊員だったはずですが、私の記憶違いでしょうか。
憲法と自衛隊の関係にいかなる意見があろうが、現実にそうした活動をしている自衛隊や自衛隊員を否定するのは、あまりにも現実的でないし、国民の支持も得られない「財源」だと思います。
民主党政権の「事業仕分け」もそうでしたが、どっかの予算を削って別のところに回せ、という「パイの取り合い」は、かならず「必要なのに削ってしまう」矛盾を犯すことになるんです。
予算の適切な配分と執行はもちろん求められるものですし、大企業の「溜め込み」にメスを入れたいのならそれもいいでしょう。
でも問題は、それだけでデフレ経済を変えられますか、ということです。
いずれにしても、20年間、日本共産党はそういうお題目ばかりで何も結果を出せなかったのです。
デフレに対して無力だったのです。
そんな日本共産党に、このコロナ禍での財政出動を反対できるのか、ということを私は疑問に思います。
結果は出せないのに邪魔だけはするのか、という思いです。
ま、そもそも麻生財政が、MMTの実験をするつもりはないと言い張ってますけどね。
そっちの援護射撃をシているわけだ。
日本共産党は経済をわかっているのかの大合唱
Web掲示板のスレッドです。
【MMT】志位和夫委員長「『政府は借金を増やしても心配ない』とは思わない。急激なインフレになる可能性があるからだ」 [ボラえもん★]
https://t.co/dH2YrMGyeX pic.twitter.com/CpEJj4d7ms— 石川良直 (@I_yoshinao) June 4, 2021
主なコメントを引用します。
7ニューノーマルの名無しさん2021/06/04(金) 00:41:17.93ID:Bw9oVWDf0
実際に借金をどれくらい増やしたら10%もインフレするのか考えてもないのにハイパーインフレにビビるってアホかな5ニューノーマルの名無しさん2021/06/04(金) 00:40:39.87ID:6rXX3h6E0>>10
一年間で100兆円近く、長期債務残高が増えたにも関わらず、金利もインフレ率も上がらない。なぜでしょう。
地方債はともかく、「国債」は単なる貨幣発行に過ぎず、日銀が国債を無制限買取しており、さらにコロナ禍で需要が激減してしまったためです。
政府の国債(貨幣)発行と支出が不十分であるため、デフレギャップが埋まらず、インフレ率が上がらない。ただ、それだけの話ですよ。
ちなみに、2020年度の日本政府の長期債務残高は、1970年の166倍です。
「国の借金が166倍になった~っ!」
にも関わらず、金利もインフレ率も上がらない。この「実績」は大きい。10ニューノーマルの名無しさん2021/06/04(金) 00:43:23.41ID:Bw9oVWDf0
>>5
共産党って消費税反対の立場だと思うんだけど、ここで説明されてるような経済のことなんもわからずにただ反対だけしてる連中ってことなんだね13ニューノーマルの名無しさん2021/06/04(金) 00:44:57.91ID:T3rtgBbk0
30年間デフレでハイパーインフレを心配する謎の勢力14ニューノーマルの名無しさん2021/06/04(金) 00:45:00.83ID:v/eEeCW60
こいつなんのためにインフレターゲットてのがあるのか知らないのかな。
これだけ大量に国債刷っても全くインフレしてないのに、あとは財政出動して需要喚起するしか手がないのにこんなゴミが政府を動かしてるから国民が貧困化して苦しんでる。
戦後で供給能力がまったくなかった日本と現在の供給能力のある日本を同じように考えて国民を騙すのはもはや犯罪ですよ志位委員長。68ニューノーマルの名無しさん2021/06/04(金) 01:16:33.07ID:rcyoWRo+0
>>1
2011年の東日本大震災では1000年に1度の大地震と大津波で
日本国土の半分が大きな被害を受け物流は止まり
さらに原発の爆発で電力供給能力も著しく低下し日本の生産性そのものがガタ落ちした。その年は44.3兆円の新規国債を発行したが
はたして国内でハイパーインフレは発生したか?
円は大暴落したか?実際には2011年度インフレ率コアコアCPIは年率?1%のデフレ
3.11から5日後には投機家の円買いが進み 1$=76円25銭という戦後最高値を更新し
同年10月末には現在まで破られていない円の史上最高値75円32銭を記録したそれが事実現実です。
ということで、「志位さん、よく言った」というコメントはありませんでした(笑)
日本共産党に対する幻想、というほどではありませんが、長い間、私の中に買い被りがあったのかもしれません。
以上、志位和夫日本共産党委員長が、MMT(現代貨幣理論)について「急激なインフレになる可能性がある」として賛成しない旨を表明、でした。
財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生 – ステファニー ケルトン, 土方 奈美, 井上 智博, Audible Studios/早川書房
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コメント
MMTは分配の問題とセットで論じなければ意味がない。格差の問題から目をそらせていてば、国は財政破たんしなくても相対的貧民(貧民というのは必ず相対的)が革命的反抗に出る。2パーセントのインフレなんて言ってる場合ではない。「乏しきを憂えず等しからざるを憂う」。2千年以上も前に聖賢が言っている言葉を人間はまだ理解できないのか。