昨今の物価上昇について、円安を原因としたインフレという指摘がありますが、それらについて疑義や留保をつける意見もあります。

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昨今の物価上昇について、円安を原因としたインフレという指摘がありますが、それらについて疑義や留保をつける意見もあります。

昨今の物価上昇について、円安を原因としたインフレという指摘がありますが、それらについて疑義や留保をつける意見もあります。昨今の物価上昇は円安ではなく品不足であり、またインフレと言ってもコストプッシュ型のインフレであるとの指摘です。

原因の分析を誤れば、経済はますます冷え込みますし、インフレーションとはなにか、ということを改めて認識し直すよい契機かもしれません。

物価高騰の原因は日米金利差ではなく、世界的な品不足

各社の値上げが話題です。

大塚食品、タカラトミー、シャオミ、おやつカンパニー、味の素冷凍食品、明治など、8月の値上げ品は今年最多の2600品目に及ぶそうです。


食料品やガソリンなど物価上昇中の2022年。

1月はパンや小麦粉、2月は公共料金、3~4月はティッシュペーパーや首都高料金などの値上げがすでにあり、家計への圧迫を感じる人は増えているはずです。

日本銀行が5月16日発表した4月の国内企業物価指数(2015年平均=100、速報値)は113・5と、前年同月に比べて10・0%上昇しました。

総務省がその4日後の20日に発表した4月の全国消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は、前年同月比2.1%上昇の101.4でした。 伸び率の大きさは消費税増税の影響で2.2%上昇した15年3月以来約7年ぶりだそうです。

原因は円安と言われています。

もとより、「円の安全通貨の基盤が毀損され得る」というのは与党自民党財政再建推進本部もかねてから抱いている懸念です。

では、どうすればいいのか。

それは日米の金利差が原因だから、「財政健全化で円の信認を得る」という意見があります。

しかし、それを否定しているのは、西田昌司参議院議員です。

そんなことをしたら、日本はまた「どん底に落ち込んでしまいますよ」と警鐘を乱打します。


西田昌司議員は、物価高騰の原因は日米金利差ではなく、世界的な品不足にあると述べています。

「物価が上がっていると言われているそま原因は、日米金利差で円安になったかというと、その影響はほとんどまだ出ていません。その根本的な原因は、資源・エネルギー価額、これはロシアのウクライナ侵攻による供給不足から来ている話ですね」

物価が上がることは、一般にインフレといわれています。

従来、日本はデフレが長く続き、黒田東彦日本銀行総裁は2013年の就任記者会見で、「2%の物価目標をできるだけ早期に実現するということが、日本銀行にとって最大の使命」としました。

2%ずつ物価が上がるような経済の動きこそがちょうどよい、と具体的な数字を国として定めたのです。

2%のインフレ目標は「グローバル・スタンダード」であることも強調し続けています。

これは、安倍政権だけでなく、岸田政権でも継承することは、すでに政府答弁でも明言されています。

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岸田文雄総理は、26日の政府答弁で「MMTは採用しない」と述べたことが話題なっています。しかし、その答弁自体正しいのか。MMTは現代貨幣理「理論」であり、「政策」や「イデオロギー」は、それをいかなる価値に使うかという話で全く別ものだからです。

では、2022年の「インフレ」は、その目標に向かっていると言えるのでしょうか。

そんな実感、ありませんよね。

そのとおりです。

インフレーションには「良いインフレと悪いインフレ」の2通りあり、現在の値上げは好ましくない方の「悪いインフレ」といわれています。

  • デマンドプル型インフレーション
  • 需要が増大することで品物が不足気味になり、物価が上昇することをデマンドプル型インフレと呼びます。

  • コストプッシュ型インフレーション
  • 材料不足等で成果物を作る際の生産費用が増加したため、賄うために物価が上昇するインフレをコストプッシュ型インフレと呼びます。

デマンドプル型は、ニーズが物価を引っ張り上げるのに対し、コストプッシュ型は供給側が物価を押し上げる違いがあります。

デマンドプル型は、ニーズが高まるわけですから経済が好循環の時に生じるインフレで、賃金も上がります。

成長型インフレ、などともいわれます。

一方、コストプッシュ型は物価だけが上がり、国民生活は苦しくなります。

日銀が「2%」を目指しているのは、もちろんデマンドプル型インフレです。

ただし、現在の値上げラッシュはコストプッシュ型インフレです。

物価上昇の原因をきちんと分析せよ

さきほどの西田昌司参議院議員のビデオレターには、デマンドプル型インフレーションとコストプッシュ型インフレーションの説明もされているので、引用します。

成長型のインフレというのは、経済が成長して、つまり需要が大きくなって供給を上回る需要があって、そのために物価が上がっていく。しかし、需要が大きくなっているのですから供給を増やしていけば、物価の上昇は緩やかになっていく。それでも経済成長をしていけば供給も増える。要するに需要に後追いして供給も増えていきますから、需要と供給の両方が増えることで経済のパイ自体が大きくなる。これが経済成長している正しいインフレのあり方・姿なのです。
では、現在はどうかというと、まさにコストプッシュインフレですよね。需要が伸びて、そのために物価が上がっているんじゃないわけですよ。たんに供給量が抑えられてきたために資源・エネルギーの価額が上がっているのです。これを抑えるために特別措置をして、原油元売り会社などに1リットルあたり35円程度下げられる形になっているわけです。

アメリカやヨーロッパでは、すでにコロナ禍が峠を越し、マスクも外して自由に生活をして、消費も伸びている。

景気が加熱しているので、それを抑えるために利上げをしているから、景気が沈んだままの日本とは全く状況が違う。

にもかかわらず、金融引締めなどしたら、ますます消費者側を苦しめることになる、というのが西田昌司議員の見解です。

そうした物価上昇の原因をきちんと分析もせず、欧米のマネをして利上げをしたらトンデモないことになる、といいます。

Facebookでは、積極財政とインフレの問題、というのがいつも議論になります。

たとえば、「お金を刷ったらインフレになる」という人がかならずいるのですが、改めて述べれば、「2%インフレ」までデマンドプル型インフレーションを引き起こすために財政出動が必要なのです。

つまり、お金が回ることで、購買意欲が喚起される。

経済が活性化することで、お金を溜め込んでいる人も新たな事業に投資する。

もうひとつ、「すでに現在は物価上昇、つまりインフレになっているからデフレ対策は要らない」という人もいるのですが、昨今の物価上昇は、コロナ禍に始まって、ロシアのウクライナ侵略問題など、需要の高まりが原因ではない物価上昇ですから、財政出動は不要、という理由にはならず、むしろそれはますます求められているのです。

みなさんは、いかが思われますか。

以上、昨今の物価上昇について、円安を原因としたインフレという指摘がありますが、それらについて疑義や留保をつける意見もあります。でした。

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