羽田の渡し(大田区羽田)の石碑は、多摩川渡し跡です。羽田といえば東京国際空港(羽田空港)のお膝元というイメージが強いかもしれませんが、もともとは漁業と工場の町であり、山梨県から138キロ続く多摩川のスポット多摩川八景のひとつです。
羽田の渡しの全景
多摩川八景(多摩川の河口)
羽田の渡し碑(多摩川渡し跡)近くには、多摩川八景の説明板があります。
多摩川八景とは、多摩川の河口、すなわちその説明板のあるあたりに始まり、多摩川台公園、二子玉川兵庫島、多摩大橋付近の河原、秋川渓谷、玉川上水、御岳渓谷、奥多摩湖と、山梨県甲州市地先の笠取山から東京湾まで、138キロ続く多摩川の下流から上流までの8スポットを指すものです。
多摩川八景の8スポットは、多摩川の魅力あふれる美しい風景を市民の投票で50ヶ所選定され(多摩川50景)、さらにその中から、特別に美しい8ヶ所を選んでいます。
大げさでなく「多摩川八景」は多摩川の顔なのです。
京浜河川事務所サイトより
少なくとも羽田の渡し(多摩川渡し跡)よりも下流は汽水域と言って、東京湾の海水も入る淡水と海水の混ざった水質になります。
羽田の渡し(多摩川渡し跡)には、野鳥の群れとともに、アサリやハマグリなどが捕れる潮干狩りの場であり、中洲にはヨシが茂ります。
アナゴ、シジミ、アサリなど漁業の拠点
羽田の干潟で、シジミの漁業権設定がニュースになったことがあります。
多摩川の河口域で一時姿を消したシジミが復活し、両岸の東京都大田区と川崎市の干潟で多くの人が潮干狩りを楽しんでいる。下水道の整備や住民の清掃活動が実り、シジミの成育環境が改善された。東京都は乱獲を防ぐため、今秋、半世紀ぶりにシジミの漁業権を設定する。(東京新聞 2013年8月3日 朝刊)
市民と行政とが、ともに川づくりに取り組んできた”協働”の成果として、多摩川の汽水域が漁業地域として復活したのでしょう。
羽田の渡し(多摩川渡し跡)を少し歩いた土手沿いは、貝類が潮干狩りで獲れます。
東京湾の名産、アナゴについては漁師が獲りに行きます。
また、羽田大師橋の近くには釣船店や釣り船、屋形船などの発着場があります。
たとえば、『喜劇 女は度胸』(1969年、松竹)という映画は羽田が舞台になっていますが、このあたりの有名な『かめだや』いう釣り船店も映ります。
今のかめだやです。
さらに、大田区は東京湾を利用して、海苔の養殖が盛んでした。
それが、昭和30年代以降、徐々に町工場が増え、高度経済成長時代は京浜工業地帯の中核となりました。
また、近くに多摩川がありますから、農業も何らかの形で行われていました。
大師橋
羽田の渡しは、右側に首都高速道路横羽線、左に東京都道・神奈川県道6号東京大師横浜線(産業道路)が走っています。
大師橋の方は一般道なので、自転車や歩行者もいます。
羽田の渡しの場所をわかりやすく説明する場合、この大師橋を絡めて説明するほうがわかりやすいでしょう。
ただ、この大師橋を管理しているのは大田区ではなく、川崎市なのです。
川崎大師の「大師」というのは、大師橋の南西約1キロメートルのところにある川崎大師が由来ですから。
赤レンガの堤防
羽田の渡しの前にある多摩川沿いの道を歩くと、土手道に赤いレンガが使われていることに気が付きます。
これは、大正時代に多摩川沿いに建築された赤れんがの堤防の跡です。
羽田付近に多摩川に沿って現れる歴史的構築物です。約1.6kmといわれています。
といっても、1.6km続いているのではなく、現在はその一部が名残をとどめている程度です。
羽田の渡し界隈のスポット
羽田には、食べ物レビューサイトに出てくる店がいくつかあります。
羽田の渡しの最寄り駅は、京急羽田空港線穴守稲荷駅になります。
駅前はふれあい通り商店街といいます。
喫茶&軽食の店ながら、大盛りナポリタンやオムライスなどメニューがすべて盛りが良い店、ずう(大田区羽田)があります。
盛りが良いのは、昨今のインスタ映えを意識しているからではなく、もともと地元の人のためのサービスです。
2017年、2018年と行きましたが、今年も桜の季節あたりに行ってみたいものです。
駅前はふれあい通り商店街の終点は環状八号線があり、そこを超えると、やはり大田区の一大スポットである羽田クロノゲートがあります。
クロネコヤマトの宅急便が物流の拠点としており、予約すれば見学ができます。
羽田の渡しと羽田クロノゲートという、対象的なスポットがある羽田の街。
もともと漁業の街であったところに高度経済成長時代は町工場もでき、そらにこんにちでは物流の玄関口にもなっている、いずれにしても生活の拠点であることがよくわかります。
以上、羽田の渡し(大田区羽田)は多摩川渡し跡の石碑であり羽田がもともとは漁業の町であることが分かる多摩川八景のひとつ、でした。
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