羽田七福いなりめぐり、というのも大田区ではお馴染みです。七福神というのは、大田区に限らず、各地の神社・寺院に、ご神体やご本尊などとは別に信仰され ている七柱の神が祀られていますが、「羽田七福いなり」とは、別の神が祀られているわけではなく、7つのご利益のある神社を巡るものです。
要するに、神社巡回コースといったところでしょうか。
羽田七福が他の七福神と異る点
羽田七福が、他の七福神と大きく異る点があります。
それは、
1.「七」は全て神社である
2.七福神は祀られていない
3.「めぐり」には赤い鳥居も白い鳥居も混在している
といったことがあります。
通常、七福神が祀られているところは、神社・仏閣の“超党派”です。
ところが、羽田七福いなりめぐりは、すべて神社です。
また、冒頭に述べたように、七福神は、ご神体やご本尊などとは別に信仰されている七柱の神が祀られているが、「羽田七福いなり」というのは、「七柱の神」は置かれていません。
七福神のような別の神があるわけではなく、文字通りその神社の「神」を7つ巡ります。
そして、「羽田七福いなり」の「いなり」とは、稲荷神社のことを指していますが、「別格」として稲荷神社ではないものも含まれています。
稲荷神社は赤い鳥居だが、白い鳥居も神社もあるのです。
具体的には、糀谷・萩中・羽田地域にある、7つの稲荷信仰神社と、1つの弁財天神社をコースとしています。
羽田七福いなりめぐりは、お正月の1月1日~5日は各神社で御朱印を受け付けていますが、もちろん普段の日に神社をまわることはできます。
赤い鳥居と白い鳥居が共存
もとより、羽田は神社の多い町です。
漁業の町であったことから、漁の無事や大漁をお願いする地元民が多かったということでしょう。
さらに、羽田は町工場も多かった。
商売繁盛をお願いする“ニーズ”もあります。
羽田には、産業道路を挟んで、天照皇大神(あまてらすすめらおおみかみ)を祀った羽田神社(羽田本町)と、稲荷信仰の穴守稲荷神社(羽田町)の二大神社があります。
もっとも、羽田神社の兼務社である萩中神社の中に、稲荷信仰の東官守稲荷神社があるなど、白い鳥居の神社の中に赤い鳥居があることはめずらしくありません。
信仰は異なっても共存しているから、「二大」といっても別に宗教上対立しているわけではないようです。
祈る対象が異なるだけで、信仰そのものは同じということでしょうか。
ということで、前置きはともかくとして、「羽田七福いなり」を順番に見ていきましょう。
東官守稲荷神社(身体安全)
正式なコースの順に行くと、最初は京急羽田空港線糀谷駅から徒歩7~8分のところにある東官守稲荷神社です。
萩中神社内にある。住居表示は萩中です。
当時の村人は半農半漁だったので、海における仕事の安全を祈る守護神として村人達の信仰を集めていたそうです。
萩中神社の拝殿の正面左側に、遊具と稲荷信仰特有の赤い鳥居が並び、その横に本殿があります。
妙法稲荷神社(招福厄除)
妙法稲荷神社は、本羽田という、羽田よりも多摩川よりの町にあります。
いくつも赤い鳥居が連なる先に拝殿があります。
京都伏見大社の分霊を賜って大松の下に社殿を建立。鎮座されたものといいます。
東官守稲荷神社と、この妙法稲荷神社は、敷地の中に遊具が置かれていました。
重幸稲荷神社(開運長寿)
重幸稲荷神社は、本羽田という町にあります。
昔は大野上田という町名で田畑があり、その守護と五穀豊穣を祈って建てられたそうです。
最寄りのバス停は「羽田上田」です。
高山稲荷神社(学業成就)
赤い鳥居と言っても、豊作祈願だけではありません。
高山稲荷神社は東官守稲荷神社同様、白い鳥居の神社(中村天祖神社)の中にあります。
もともと飛騨高山から来た大工によって建てられたので、高山という名前がつきました。
鴎稲荷神社(開運招福)
鴎稲荷神社(かもめいなりじんじゃ)は、いかにも漁業の町、羽田らしい神社です。
漁師の祈願で、かもめが飛来し大漁になったために、「鴎稲荷」になったのです。
神社は細い道を入った住宅群にあり、地元の人でないとわかりにくいかもしれません。
玉川弁財天(金運長寿)
玉川弁財天は白い鳥居である。つまり稲荷信仰ではありません。
したがって、羽田七福いなりめぐりにおいては、コースの中には含まれるが、「別格」扱いです。
コースの途中だから含めたのかもしれないが、赤い鳥居と白い鳥居が混在する神社が含まれる羽田七福らしい。
多摩川沿いの道を南下し、海老取川が東京湾に流れる多摩川の最下流にあります。
空港の敷地内にあったものが、連合軍の強制立退命令により現在地に移りました。
玉川弁財天のすぐ近くには弁天橋があり、その向こうには、かつて旧羽田空港の駐車場にあった大鳥居が移設されています。
白魚稲荷神社(無病息災)
玉川弁財天から海老取川沿いを歩き、弁天橋に通じる道を少し戻ると白魚稲荷神社に着きます。
白魚稲荷神社も鴎稲荷神社同様、住宅群の細い路地を入ったところにあります。
多摩川の砂利砂採取業者の信仰を受けました。
これで7つの神社をめぐったことになります。
そして、コースのゴールはやはりここです。
穴守稲荷神社
すでに穴守稲荷については述べました。
もともと現在の空港の敷地にあったが、終戦後、進駐軍の羽田空港拡張のため現在地に遷座して現在に至ります。
これまで巡った神社は小さいところが多かったが、穴守稲荷神社はさすがに立派です。
赤ちゃんを抱いた若い夫婦のお宮詣りもあります。
神社を歩く途中は、糀谷、萩中、羽田など、大田区南部の町並みを見ながらの散策となります。
一説には、羽田はもっとも犯罪の少ない街だそうですが、歩いていて、何か昭和時代に帰ったような、なんとも言えぬ暖かさを感じました。
大田区愛のある方には、ぜひお勧めしたい散策スポットです。
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